「母さんがどんなに僕を嫌いでも」を2回観た話

虐待サバイバーが虐待の映画を観るの?

母さんがどんなに僕を嫌いでも

んー、正直自分もそう思った瞬間もありました。

 でも原作者の歌川たいじさんの言葉に

「この映画を観て、人生の収支を黒にできるって知ってもらえたら」

「ゲームで言うところの『ライフ』をプラスにできたら」と、暖かい言葉を使う方だなぁと思って観ました。


 まずは1回目。痛い、傷が痛い、無理、って最初思いました。頓服薬飲んじゃいましたもん。

それで少し落ち着いて、それでも涙が出てきて、それは他のお客さんが流してる涙と違う涙だったかもしれません。映画の中のタイジ君が閉じ込められた後でられた時の漏れ出る光に共感したりして涙が止まらなかったり、太賀君や子役の小山君の作り笑顔に涙がまた出てきたり。 笑っていれば何もかも解決する、みたいな、自分がバカをすればいいんだと思ってた時期を思い出して泣きまくりました。


 母親役の吉田羊さんは本当に素晴らしい母を演じていらっしゃいました。 本気で憎めたし、本気で最低な母だと思ったし、本気でかわいそうな人だと思ったし、本気で不安定な母と重なりました。この役を本気で演じるのはとても難しいことだと思います。


 ラストの言葉。この言葉でタイジ君の収支は黒字になったんてすね。


 それから2回目。なんで2回目を観ようかと思ったかと言うと、シネスイッチ銀座で原作者の歌川たいじさんとプロデューサーさんのお話が聞けるからです。

正直ラジオやインタビューの歌川さんのお人柄に大変魅力を感じていました。実際にお目にかかりたかったのです。

そして歌川さん、この「虐待サバイバー写真展」を見ていてくださっていたのです。


 2回目はだいぶ落ち着いて…うそ。号泣しました。友人とのやりとり、次第に打ち解けてく太賀君の演技。ばあちゃんと自分のおばあちゃんが重なるし、木野花さん大好きだし。 最後エンディングでは吉田羊さんと太賀君が仲良くまぜごはんを作るシーンを勝手に夢想しながら観ました。そんなシーンを写真にしたい!


でもこの映画には虐待が描かれてます。

虐待を受けた母からの愛を受け取るまでのたたかいの実話です。

自分には母の愛は要らない。母は要らない。です。


そんなダークな気持ちも抱えつつ歌川たいじさん、プロデューサーさんお二人登場。 予想はしてたけど歌川さん、ゲイバーの営業トークそのまま。うまくいじりつつ話を深めて自分を落として笑わせて。ここは銀座。二丁目じゃないよ!楽しかったです!



 そんな雰囲気で和やかで楽しく、でも映画にまつわるエピソードを披露して下さり、最後の最後に歌川さんの話。 

日本では虐待に対する関心も予算も人的なプロフェッショナルも全然足りない現実や、そんな中で一年で虐待で亡くなった子どもの数、その調査の結果に誤差があり、それは親の虐待の自覚のなさからくる問題の話まで、涙をこらえながら一所懸命話して下さいました。

 それを聴きながらまた号泣。

 虐待サバイバーは、自分が傷を負ったからこれ以上同じ人間を増やしたくないんです。その想いが同じなんだと思ったら歌川さんが、たいじ青年がとても愛おしい存在に思えました。

 単純に「毒親が簡単に変わるわけない」って話じゃないです。

少なくとも、この映画のおかげで自分のライフは一つ増えました。 とってもいい映画でした。辛さも痛さもあったけど、勇気を出して観て良かったし、歌川たいじさんとツレちゃんさんに光が当たりますように。

虐待サバイバー写真展

親からの虐待を経験し、それでも親の手から生きのびたサバイバー達の「生きている」写真を撮っています。 これから先の道に希望が満ちていくような願いを込めて作ったサイトです。 15人の被写体の方の応募は締め切っています。この後、虐待サバイバー写真展は、書籍化、実際の写真展に向けて動き出します。