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渡邊 千紗


必死に訴えても 誰にも伝わらなくて

必死に叫んでも 誰にも気がついてもらえなくて

必死に泣いても 誰にも届かなくて


いつの頃からか

学校に行くことを辞め、自傷し、物にあたるようになった。


それでも誰にも伝わらなくて

いつの頃からか、誰かに伝えることをやめた。


伝えることを辞めると、次は感じることをしなくなる。

何が嬉しいとか何が苦しいとか何が嫌だとか全部、無くなった。


目が笑わなくなって

口グセは”すみません”になった。


何が苦しい、何が辛い…そんなことはわからないけれど、とりあえずイライラするから周囲の人にあたった。

どうせわかってくれない人たちがだから、傷つく前に離れようって…。

そうして生きてきたほうがずっと、ずっと楽だった。


でも年齢を重ねれば重ねるほど

この生き方では生きにくくなっていった。

どうすれば良いのかも、何をすれば良いのかもわからないままだった。

時間だけ過ぎて行く中で、たくさんの人に会った。

多くの人の生き方に触れた。


みんな、いろいろな想いを抱えたくさんの経験をして生きていることを知った。

皆、出会いに救われ、自分で道を拓いていた。


いつの頃からか、自分も出会ってくれた人のようになりたいと思うようになった。



まだ、まだ進んだり、戻ったり

不安定すぎるくらい不安定な日々を生きている。


いつかきっと出会った人たちのように

キラキラした大人になれると信じて…

虐待サバイバー写真展

親からの虐待を経験し、それでも親の手から生きのびたサバイバー達の「生きている」写真を撮っています。 これから先の道に希望が満ちていくような願いを込めて作ったサイトです。 15人の被写体の方の応募は締め切っています。この後、虐待サバイバー写真展は、書籍化、実際の写真展に向けて動き出します。